📘 第2話:労働条件通知書って、契約書とは違うの?

求人票が完成してホッとしていたひよこ社長
でも、みらい先生から次の課題が出された

みらい先生

「採用が決まったら渡す書類を作りましょう。『労働条件通知書』です」

「あ、あれね。労働契約書ってやつ」

ひよこ社長
みらい先生

「実は違うんです。契約書は“必須じゃない”。通知書が“必須”なんです」

ひよこ社長、一瞬フリーズ
そこ、完全に誤解していた…

雇用契約と労働契約という言葉がありますが、どちらも企業と従業員の間で締結されるものであり、あまり大きな違いはありません。厳密には法的根拠が異なります


✅ 労働条件通知書は“義務”だけど、契約書は“任意”

「え、じゃあ契約書っていらないの?」

ひよこ社長
みらい先生

「法律上、契約は口頭でも成立します。
労働契約書も法的に必須ではありません」

「口頭で成立!? そんな軽い感じでいいの…?」

ひよこ社長
みらい先生

「ただし。
“労働条件通知書”は必ず書面で交付する義務があります。
働く時間、賃金、仕事内容などを“書面で明示”しなければいけません」

交付の方法については、書面以外にも労働者が希望する場合には、FAXや電子メール、LINEなどでもOK(出力して書面を作成できるものに限る)とされています

ここでようやく理解が追いつく

  • 契約は口頭でも成立
  • でも条件の明示は書面で必須

つまり“契約に関する書類”という意味で契約書と通知書が混同されやすい


✅ 実務では「契約書+通知書」を一体化して1枚にしている

「じゃあ労働条件通知書だけを作ればいいってこと?」

ひよこ社長
みらい先生

「実務では、両方をまとめた『労働条件通知書兼雇用契約書』として1枚にする会社が多いです。
そのほうが分かりやすいですし、トラブルも防げます」

「なるほど。通知書と契約書をセットにするのはアリなんだな!?」

ひよこ社長
みらい先生

「むしろオススメです。
ひよこ社長みたいにこれから人を増やす事業には向いていますよ」


✅ 内容は求人票の“確定版”

求人票を作った翌日
ひよこ社長は、みらい先生の机の前に座っていた

みらい先生

「労働条件通知書に書く内容は、求人票とほぼ同じ…と言いましたが、
実は“法的に明示が義務づけられている項目”がハッキリ決まっています」

「あ、求人票より厳密に書かなきゃいけないんだな」

ひよこ社長
みらい先生

「そうですね。求人票も記載すべきの内容は決められていますが、あくまでも契約前に会社側が提示するものです。
求人票の内容と労働条件通知書の内容が異なっていたら「話が違う!」となりますからね。
労働条件通知書はお互いに”合意した内容”というイメージです」


📌 労働条件通知書に必ず書くこと(絶対的明示事項)

みらい先生

「まず“絶対に書かなきゃいけない項目”がこちらです」

絶対的明示事項(法律で必須)

  • 契約期間(期間の定めの有無)
  • 就業の場所・従事する業務の内容
  • 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、シフト制の場合の交代について
  • 残業の有無と残業命令の根拠
  • 賃金(基本給・手当・締日・支払日・支払方法等)
  • 退職に関する事項(解雇を含む)
みらい先生

「これは必ず“書面で”伝える必要があります」

「なるほど。特に重要なところを書面にして残すんだな」

ひよこ社長

📌 状況によって書くべき項目(相対的明示事項)

みらい先生

「もうひとつ、“該当する場合に書かなきゃいけない項目”というものがあります。
”相対的明示事項”というむずかしい言いかたをしていますが、ようするに”その定めをするならしっかり書いてね”という項目です」

相対的明示事項(該当する場合)

  • 昇給
  • 退職金
  • 賞与(ボーナス)
  • その他の賃金
  • 安全・衛生
  • 職業訓練
  • 災害補償・休業手当
  • 休職制度

「あ、賞与なしなら“なし”って書けばOKってことね」

ひよこ社長
みらい先生

「そうです。“あるなら内容を書く/ないなら書かない、もしくは「ない」と書く”。
この明確さが後のトラブル防止になります」


📌 新しく追加された重要ポイント「就業場所・業務内容の変更の範囲」「契約更新について」

就業場所・業務内容の変更の範囲

みらい先生

「求人票でも触れましたが、通知書でも“変更の範囲”は必須です」

  • 仕事内容の変更の可能性
  • 勤務地の変更の可能性

「ぴよぴよリサイクルなら、市内の別店舗とか、ネット販売部門とか?
まだオープンもしてないのに気が早いな」

ひよこ社長
みらい先生

「たしかにまだ先の話かもしれませんが、異動や業務拡大の可能性がある業態では、ここをきちんと書くのが本当に大事です」


有期契約の場合の更新について

ここでみらい先生が資料を出す

みらい先生

「アルバイト、パートとして雇うなら通常は有期契約になると思います。
無期契約は期間の定めがない契約のことで、これに対し契約期間を定めるのが有期契約です。
つまり1年契約で、満了後もお互いに合意すれば”もう1年契約しましょう”というような契約のことですね」

たしかに先のことは分からないからな。いきなり無期契約っていうのもな」

ひよこ社長
みらい先生

「この有期契約の場合には、通算の契約期間または更新回数の上限を明示しなくてはなりません」

「つまり契約期間は1年だけど、”更新しても5年が限度ね”とか、”更新は4回までね”ということを決めておいて労働条件通知書に書かなければならないということか」

ひよこ社長
みらい先生

「そうです。そしてお互いが納得すればこの限度を超えて契約の延長をすることもできますが、この契約が5年を超える場合、本人から申し出があれば無期契約になるというルールがあります」

「パートさんも多い業界だし、これは知っておかないと…」

ひよこ社長
みらい先生

「この”無期転換ルール”はとても重要なんです。
この辺は次回しっかり解説します」

有期労働契約の期間は、上限が原則3年です。なお、専門的な知識等を有する労働者や満60歳以上の労働者との労働契約については、上限が5年とされています

無期転換ルールは、会社の将来の運営に直結する問題であり
けして軽いテーマではない


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